CASE STUDIES

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Japan

  • #1 リホーミング〜牧場への里帰り〜ダーレージャパン・白井牧場

    北海道沙流郡日高町にあるダーレー・ジャパンでは、競馬を引退したサラブレッドたちへのケアを行いながら新しいキャリアへと送り出すリホーミングプログラムを実施。
    白井牧場では、競走馬の生産育成等を行うかたわら、治療や休養を終えた引退競走馬たちへリトレーニング(再調教)を行い、セカンドキャリアの礎を築いている。

    澤井さん:現役の競走馬はトップアスリートですので、トレーニングもレースも負荷がかかります。引退してすぐの馬たちは心身共に疲れていますので、環境のよいところで馬本来の姿に戻ってリラックスしてもらう時間を提供しています。サラブレッドは特に運動能力が高く、様々なことに転用ができる馬の品種です。次のキャリアへ進むことが普通になればと感じています。
    白井さん:競走馬としてデビューしても、何年も競馬を続けていける馬は何割かしかいない。少しでも引退した馬たちの面倒を見れればと思っています。引退競走馬を「引き取る」と一言で言っても、言葉で言うほど簡単なことではないけれど、自分たちが送り出した馬が活躍してくれたら、それは非常に喜ばしいことだと思います。

  • #2 馬術競技馬への道中島トニアシュタール

    茨城県東茨城郡茨城町にある中島トニアシュタールでは、約40頭の引退競走馬たちが暮らしている。平日は広々とした放牧場で過ごし、ストレスを解消。また、多頭数で放牧することにより、馬同士の良い関係性を構築している。13戦0勝と競走馬時代には成績を残せずにいたダイワシュガー号。現在は障害馬術競技で注目されるほどに成長を遂げている。

    馬術が普及してくれば、引退競走馬の需要は増えてくると思うんです。どの馬も臆病で、馬が驚いたことにどう対応したかで、その馬は出来上がっていきます。サラブレッドは速く走ることには長けてるけれど、そのまま馬術競技に使うことはできなくて、まずはゆっくり走ることから。障害馬術であれば、低い障害から順繰り慣らして、いずれ高い障害が飛べるように、時間をかけて調教していきます。競走馬の引退はそれで終わりではなく、馬は、20歳、30歳まで生きていきます。競走馬時代の2年、3年というのは、馬が生きていく中でのひとつの通過点ですから。育成牧場と競馬場で、人が乗って走ることを教わって、次は、その馬たちに馬術競技の馬として調教していくのが、私たちの仕事だと思っています。

  • #3 人の先生になる〜未来のホースマン育成〜BTC 軽種馬育成調教センター

    北海道浦河郡浦河町にあるBTC(軽種馬育成調教センター)では、競走馬の生産や育成に携わるという目標をもった未来のホースマンの研修を行なっている。その育成の過程や競馬を経験してきた引退競走馬たちは研修生にとって先生そのもの。その瞳や背中、反応のひとつひとつで、ホースマンにとって大切なことを伝えていく。

    玉井教官:入校してくる研修生達の約8割が乗馬未経験者です。将来育成馬もしくは競走馬に騎乗するという目標を持った研修生達が研修を行っていますので、引退競走馬でないと競馬にデビューするまでの過程を馬から勉強できないと思います。
    研修生①:馬の行動には一つ一つ意味があって、それが何なのか馬と話しながら探っていくと、少しずつ見えてくるものがある。
    研修生②:乗ってるときも、手入れしてるときも、何でもそうなんですけど、自分のやったことをそのまま返してくるような。鏡というか自分がどういう人間かを教えられる。自分自身を教えてくれるのが馬なのかなと思います。

  • #4 人の心に寄り添う~家族のように〜WHANAU STABLE

    静岡県御殿場市にあるファナウステーブルでは、年間約15頭の引退競走馬たちを再調教している。「Whanau(ファナウ)」とは、ニュージーランドのマオリ民族の言葉で「家族」。ニュージーランドでの経験から学んだ馬との付き合い方を日本で実践し、人と馬が共に集える空間で家族のようにクラブに通う子供たちの成長を見守る。

    ニュージーランドで馬は特別な生き物じゃなくて、日本で言うと犬や猫みたいに自分の家に馬がいるみたいな感じ。特別な乗馬クラブがあるというよりも、みんな家庭で馬を飼ってる感じなんですよね。
    馬を感じてもらいたいので裸馬に乗せたりして、馬とのコミュニケーションをとれるようにしています。はじめのうちは乗ってる子も怖いと思うんですけど、だんだん慣れてきてリラックスしてくるとすごく楽しくて力も抜けてくるんです。僕たちの夢というか今後の目標なんですけど、なるべく馬がストレスのない環境、それで子供たちが遊べる環境。子供たちがファナウステーブルに来て、いろいろな経験をする中で、馬と遊んで楽しめるような乗馬クラブにしていきたいですね。

  • #5 青春のパートナー〜大学馬術部にて〜早稲田大学馬術部

    東京都西東京市にある早稲田大学馬術部は、昭和2年に創部。90年以上の歴史を持ち、部員数は25名、20頭の馬を繋養している(2020年11月現在)。馬歴もさまざまな学生たちが、日々障害飛越競技と馬場馬術競技の練習を重ね、馬の調教・輸送・管理などすべてを自らの手で行い、馬たちから人生の中で大切なことを学ぶ。

    武井さん:高校の馬術部に入部して、そこから初めて馬に乗りました。
    伊藤さん:大学1年から近代五種として馬術競技をやっていて、この1月から馬術部で競技の練習をしています。
    古賀さん:訳がわからなくて、本当に乗りこなせるのかなという不安が最初にあって。でもやっぱり楽しいなという気持ちがあったのでずっと続けてこられたという感じです。
    児玉監督:競走だけが馬の人生ではないので、馬術の競技馬として役に立ったり、あるいは非常に温厚な馬が初心者向けの非常にいい練習馬になったりしますね。
    武井さん:馬だけでなく人の気持ちも察せられるようになってきたので、思いやりや人間性も高められたようにも思います。

  • #6 馬らしく暮らす〜終のすみかで〜ホーストラスト

    鹿児島県姶良郡湧水町にある、特定非営利活動法人ホーストラストは、現役を引退した馬たちが穏やかに暮らす牧場。昼夜放牧・共同放牧を基本とし、放牧地の面積に見合った頭数(1頭当たり0.7~1ha)が群れで生活をしている。病気やケガ、環境への順応状態によって4段階に分け、その馬の生活レベルにあった環境を整備している。

    池川さん:元々馬は群れで暮らす動物なので、本来の姿、みんなで一緒に過ごすというのが、他とは違うところかなと思いますね。
    山本さん:昼夜放牧なので厳しいシーズンもありますけど、それでも自由に寝転びたい時に寝て、草食べたい時に食べられてという環境は、自分が馬だったら幸せなんじゃないかなと思います。
    小西さん:人も馬も永遠に生きるわけではないので、自分の現役時代、そして最期の時を迎えるまで、いかに生きたかというのが重要だと思います。選択肢があって、仲間と共にこういう環境で生きることが、このホーストラストの存在意義じゃないかなと思っています。

InterviewInterview

  • ISABELA DE SOUSA(イザベラ・デソウサ)

    ケンタッキー州レキシントン在住、18歳の普通の女の子。馬術競技を通じてサラブレッドのリトレーニング(再調教)を行うようになる。特に、現在の愛馬(コズミック・ワン)のリトレーニングを通して、多くの競馬ファンとのつながりも体験。今後もライダーとして、もっと引退競走馬の認知を上げていきたいと考えている。

    私は、ハンター・ジャンプという馬術競技をしています。最近では馬術の世界でもサラブレッドの活躍する場が増えていて、第二のキャリアを促進する素晴らしい機会になっています。サラブレッドは、とても頭が良いので新しいことをすぐに吸収し、人間の意図もすぐに理解をします。逆に新しいことを教えないと飽きてしまう。競走馬たちは引退してもアスリートとして生きたがっているのだと思います。私は競馬ファンの人たちにも、競走馬としてだけでなく、引退後の競技馬としての活躍も応援してもらえるように、SNSなどを通じて再調教の様子などを発信しています。こうした活動で、引退馬の認知を上げていきたいと思っています。

  • ANNA FORD(アンナ・フォード)

    引退競走馬のリトレーニングを行う施設「NewVocations」のプログラムディレクター。自らも世界的な馬術競技者。アメリカ国内40箇所以上の競馬場から馬を受け入れ、獣医師の診断から始まるしっかりとしたプログラムで馬たちの第二のキャリアを促進している。引退競走馬に関する著作でアメリカ国内の賞も受賞。

    1992年に母がNewVocationsを設立。引退競走馬と馬に乗りたい人との架け橋になれればと思い、このプログラムをスタートさせました。馬が競馬を引退する理由は、アスリートがフットボールやサッカーなどスポーツで起こる怪我と同じです。怪我によっては、時間のかかる馬もいれば、手術が必要な馬もいます。それが回復するまでの時間を与えることがとても大事で、歩様(歩き方)が安定すれば馬の可能性を広げてあげることができます。時間をかけられずに歩様が安定しないと貰い手が少なくなってしまいます。担当の獣医師たちも一日おきにここへ来て、治療に力を入れています。獣医師たちは馬が健康になってからどのようなことができるか、一緒に考えてくれて、今後の怪我を減らすことにもつながり、我々としても力を入れています。

  • JOSH MCELROY(ジョッシュ・マッカロイ)

    子供たちに馬を使ったセラピーを行う「Central Kentucky Riding for Hope」。そこで行われる高校課程のプログラムで、ホースマンシップを担当する教師。自分自身も元兵士で、戦場から帰るたびに馬と接して、自分の心のバロメーターとしていた。

    ここに来るのは、地域の学校にうまく馴染めなかったりした子供たちです。彼らにサラブレッドを使ったプログラムを実施しています。馬は他の動物よりもセラピー効果を与えることができます。なぜなら人を評価したり、言葉で差別をしないから。馬は人間のことは気にしていないし、自分たちが安心して生活できることだけを気にしています。馬は安心を求める習性もあります。人間が精神的に安定していれば、馬もそこで一緒に休むということから、人間と馬は強い絆で結ばれていると考えられます。僕は長い間兵士として軍にいました。戦闘から帰ってくるたびに自分の馬や周りの馬を自分の心のバロメーターとしていました。馬の問題をスムーズに解決することができれば、僕と家族や周りの人々との関係を保つことができたのです。